5月28日(日) 様々な視点

様々な視点

世界各国において、ここ数年、渡航制限や移動制限が課されたことで、世界は経済活動の停滞、貿易や投資の停滞に直面してきました。

人の移動だけでなく、食料や製品の輸出入にも影響が出たこの状態を、江戸時代の政策になぞらえて「鎖国」と表現することもありました。

日本における鎖国とは、江戸幕府がポルトガル船入港を禁止した1639年から1854年に日米和親条約を締結するまでの約200年の対外政策です。

その間の交易はオランダや中国などの限られた国のみで、産業革命を経て近代化に成功した欧米先進国から大きく出遅れたとするのが一般的な見解です。

しかし、かつての日本は食糧や医療といった生活用品をほぼ国内で自給していました。さらに、文芸、園芸、絵画など多くの芸術分野が熟成され、独自の発展をとげていったのでした。

物事には必ず否定的な面と肯定的な面があるものです。片側からだけの視点にこだわらず、様々な角度から物事を見る習慣を身につけたいものです。



今日の心がけ◆物事を多角的に判断しましょう

                                                                                (出典:職場の教養 2023年5月号)

様々な視点

最近の渡航制限や移動制限は、世界経済、貿易、投資活動に大きな影響を与えた事実は否定できません。だが同時に、江戸時代の日本が教えてくれるように、制限や困難が新たな可能性とチャンスを創出する機会であることも視野に入れるべきです。

パンデミック後、地域生産やローカライゼーションに焦点を当てる企業が増えているのはその一例でしょう。また、数多くの企業がサプライチェーンの再編を試み、リモートワークを通じて働き方を変革しています。

2022年10月に日経BP総合研究所のイノベーションICTラボが行った調査によれば、テレワークによる業務の生産性は、対面での仕事に比べてどれほどだったかという質問に対し、29.6%の人々が「対面よりも生産性が上がった」と答えました。これは前回の調査(2022年3月)の20.8%から8.8ポイント上昇した結果で、生産性が変わらなかったと回答した人も含めれば、6割以上の人がテレワークによって生産性が維持あるいは向上したと報告しています。

困難に見える状況も、視角を変えることで新たな可能性が見えてくることがあります。異なる視点から問題を解決し、その結果、事態が期待以上の成果をもたらすこともあります。

現代のビジネスにおいて、デジタルトランスフォーメーションやサプライチェーンのローカライゼーションなどの課題への取り組みはすでに進行中です。これらの成功例は、多角的な視点が組織の革新と成功にとって重要であることを実証しています。

この多角的な視点は、ビジネスのみならず、私たち一人ひとりの人生においても価値ある視点となり得ます。それは私たちが直面する困難や課題を克服し、より豊かで有意義な人生を送るため

の手助けとなります。

あなた自身についても考えてみてください。物事を多角的に見る習慣を、日常生活にどう取り入れることができるでしょうか。一見困難に見える状況が、実は新たな機会や学びへの扉である可能性があります。

そうした視点を持つことは、自身の成長や進歩を促すだけでなく、困難に対する恐怖を軽減し、ポジティブな気持ちを引き出すことができます。それは自己理解を深め、新たな視点で問題を解決する手助けとなり、私たちが直面する課題を豊かで有意義な経験に変えることが可能となります。

つまるところ、外部環境の変化に伴う問題や困難は避けられないのがこの世です。

しかし、それらをどのように見るか、そしてどのようにその変化に対処するかが重要です。

そうした多面的な視点を持つことで、困難は新たな機会へと変わり、逆境は成長への糧となります。

だからこそ、私たちは多角的な視点を持つことの価値を理解し、それをビジネス日々の生活に取り入れるべきです。

以下、本日のエピソードを踏まえたお勧めの3冊をご紹介いたします。

  1. 『イシューからはじめよ』 – 安宅和人著
    安宅和人氏は日本の著名な経営コンサルタントで、多くの企業が直面する「イシュー」、つまり課題解決に取り組む際のアプローチを詳しく説明しています。彼の考え方は、多角的な視点を持つことの重要性に重点を置いています。その上で、それぞれの「イシュー」に対する理解を深め、その解決策を見つけるためのフレームワークを提供します。この本は、ビジネスリーダーが現在の課題を把握し、それに対する新しい視点を提供するための理想的なガイドとなります。
  2. 『多様性の科学』 – マシュー・サイド著
    マシュー・サイドは、多様性が組織と個々の人間にどのような利益をもたらすかを科学的な視点から詳しく解説しています。彼は、多様な背景や視点が持つ強力な力を認識し、それがイノベーション、問題解決、そして組織全体の成功にどのように貢献するかを具体的に示しています。この本は、多角的な視点を持つことの重要性を理解し、それを活用する方法を学びたいすべての人におすすめです。
  3. 『イノベーションの作法』 – 濱口秀司著
    濱口秀司氏は、イノベーションを生み出すための具体的な戦略と手法を紹介しています。物事を異なる角度から見ること、そして既存の枠組みを超えて新たな解決策を見つけるための思考法を提案しています。これらのアプローチは、多角的な視点から問題を見つめ、それを解決するための新たな可能性を見つけ出す力を育てます。この本は、新しい視点とイノベーションの力を理解し、それを活用して自身や組織の成長を促進したい人にとって、非常に価値ある一冊です。

これらの書籍はそれぞそれぞれが、異なる視点から多様性とイノベーションについて深く掘り下げています。それぞれの書籍は、具体的な事例と研究を用いて、物事を多角的に見ることの価値を明確に示しています。

『イシューからはじめよ』は、企業の問題解決に向けた新たなアプローチを学ぶための優れた指南書です。一方、『多様性の科学』は、多様性が組織と個々の人間にもたらす科学的な利益についての洞察に富んだ一冊となっています。

そして、『イノベーションの作法』は、イノベーションを推進するための戦略と手法について詳しく解説しています。特に、新しい視点から問題を解決するための思考法を提供しています。

これら3冊を通して、読者は現状の課題を見つめ直し、新たな視点やアイデアを発見するためのスキルを磨くことができます。それぞれが、新しい視野を開き、問題解決やイノベーションに対する新たな理解を深めるための素晴らしい資源となっています。

それゆえ、これらの本は、今日の複雑で変化するビジネス環境において、リーダーシップを発揮し、組織の変革と成長を牽引したいすべての方々に、大いに有用な一冊となるでしょう。