5月19日(金) ルーツを探る

ルーツを探る

ある日、Yさんは学生時代の友人と話していて、出身地の話題になりました。

友人に比べて、あまりにも自身の出身地について知らないことに気づいたYさんは、祖父母や両親に故郷について聞いてみることにしました。

地元の産業や自身の家系のこと、地域で大切にしてきた伝統などについて聞いていくと、地元に古くからある神社の話が出てきました。

Yさんが物心ついた頃にはその存在を知っていた神社ですが、実際に参拝したことはありませんでした。

祖母に詳しく話を聞くと、かつてその神社は先の大戦の時に、家族の無事を願って日参(にっさん)する母親が絶えなかったそうで、長く地域の大切な場所であったと知ることができました。

自分がどのような土地で生まれたのかを1つひとつ知ることで、先人への感謝が深まり、気力が高まっていくのを実感したYさん。今後も時間を作って、自らのルーツを知っていこうと決意したのでした。

今日の心がけ◆土地の歴史に思いを寄せましょう

                                                                                (出典:職場の教養 2023年5月号)

自分自身のルーツを探究することは、個々の自己理解を深め、人生のエネルギーを充実させる強力なツールです。

これは社会科学の研究でも確認されています。

例えば、Emory大学の心理学者マーシャル・デューク教授による研究では、「家族の歴史を知っている子どもは、逆境に立ち向かう精神的な力を持っていることが多い」と指摘されています(”Do You Know? The power of family history in adolescent identity and well-being”, 2008)。

これは、自分が所属するコミュニティや文化の一部を理解することが、自己認識とレジリエンスを向上させるからです。

さらに、これはビジネスの世界でも言えることで、自社のルーツを理解することは、その企業のアイデンティティを強化し、社員の士気を高めることができます。

例えば、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズは、一度Appleを追放されますが、その後 CEOに復帰後、自社の初期の価値観を常にリマインドし、新製品の革新に引き続き影響を与えるために、”Think Different”というスローガンを導入しました。

これはAppleの”ルーツ”、すなわち独自性と革新性への回帰を示す行動として、現在のAppleの成功の礎となりました。

上記Yさんのエピソードから学ぶことは、個々のルーツを探究することが、自分自身とのつながりを深め、新たなエネルギーを発見するための方法であるということです。

この知識は、自己理解を深め、個々の選択と行動に価値と目的をもたらします。

それゆえ、読者の皆さんには、一歩を踏み出して、自らのルーツを探究する勇気を持つことを強く推奨します。

それはあなたの生活に新たな視点をもたらし、未来へのエネルギーを充実させることにつながります。

誰しもがいつでも、自己理解と自己肯定のための力強いツールを手に入れる機会があります。

そして、それはあなた自身の歴史の中にあります。さあ、その旅を始めましょう。


本日も今日のエピソードを踏まえた、お勧めの書籍を3冊ご紹介致します。

ソース~あなたの人生の源は、ワクワクすることにある。
マイク・マクマナスによって書かれた自己啓発書で、読者に自分自身の「源」を見つけ、それを活用する方法を提供します。この「源」は、あなたが何に情熱を感じ、何にワクワクするかということを指します。

本書は自己理解と自己のルーツを探求することの重要性を強調します。自分が何を好きで、何が自分をワクワクさせるかを理解することは、自己のルーツ、つまり自己の本質や価値観を理解する一つの手段です。これは我々の先ほどの感想文で提起した視点と深く関連しています。

この本は、自分自身の「源」を見つけることが、自己の活力と幸福感を向上させ、人生の目的と方向性を見つける上でどのように役立つかを具体的に示しています。この点で、本書は自己のルーツと自己理解の重要性を追求するあなたにとって、非常に有用なリソースとなります。


スティーブ・ジョブズ
ウォルター・アイザックソンによって書かれた伝記で、Appleの共同創設者であるスティーブ・ジョブズの人生とキャリアを詳細に描いています。
この本は、ジョブズの起業家精神、リーダーシップスタイル、製品革新への情熱、そしてその独特な性格を深く掘り下げています。

私たちの先ほどの感想文におけるテーマ、すなわち「自分のルーツを理解すること」に対して、この本はいくつかの興味深い視点を提供します。
ジョブズは自身のビジョンと情熱を形成した多くの要素、例えば彼の養子としての経験やカウンターカルチャーへの関与、インドでの放浪、そして早期のAppleでの経験など、彼自身の”ルーツ”を反映しています。

さらに、ジョブズはAppleのルーツ――すなわち同社の革新的な伝統とユーザー中心の設計哲学――を、彼がCEOに復帰した後の同社の製品戦略とブランドアイデンティティの中心に据えました。
これは、自身のルーツと組織のルーツの理解がどのように価値を生むかという点で、本書が提供する重要な教訓です。

したがって、”スティーブ・ジョブズ”は、自己のルーツや自己理解の重要性、そしてその価値を探求するあなたにとって、鮮やかで洞察に満ちたリソースとなります。

競争優位としての経営理念
グロービスが出版したビジネス書で、経営理念が企業の競争力を高める方法について詳しく説明しています。経営理念は企業の「ルーツ」、つまり企業の存在意義や価値観を示すものであり、従業員の行動を導く役割を果たします。

私たちの先ほどの感想文で触れたように、組織のルーツを理解し、それを共有することは、組織全体の一体感を強化し、社員のモチベーションを高めることができます。この観点から、”競争優位としての経営理念”は、企業のルーツである経営理念がどのように競争優位を生み出すかを探求するための重要なガイドとなります。

経営理念が企業の競争力を高める一例として、経営理念が明確でそれを徹底的に実践する企業は、従業員の士気を高め、組織全体のエネルギーと創造性を引き出すことができます。また、経営理念が顧客に対して企業の価値観を明確に伝えることで、顧客の信頼とロイヤルティを勝ち取ることができます。

したがって、企業のルーツを理解し、その価値を活用する方法を探求するあなたにとって、”競争優位としての経営理念”は価値あるリソースとなります。