5月17日(水) 息子から学ぶ

息子から学ぶ

Sさんは、部署内で新たなプロジェクトメンバーに選出されました。しかし、今まで携わってきた業務とは異なる分野のため、不安な気持ちがありました。

「メンバーはほかの人のほうが良かったのではないか」「なぜ自分が選ばれたのか」そんな思いがいつも頭の片隅にあり、日に日に心が暗くなっていったのです。

そんなある日、帰宅すると、小学1年の息子が、苦手な算数の宿題と向き合っている姿を目にしました。そして、なんとか宿題を解き終えた息子の顔は、充実感と達成感に満ち溢れていたのです。

息子の姿を見てSさんは〈やったことがないと逃げていては成長にはつながらない。今の自分に与えられた役割に一所懸命に取り組むことが大切だ〉と、これまでを反省し、プロジェクトの成功に向けて自身の覚悟を決めたのです。

それからSさんは、どんな状況であっても、自分にできる仕事を精一杯行なうことを意識するようにしました。その結果、心も明るく、仕事も捗るようになりました。

今日の心がけ◆果敢に挑戦しましょう

                                                                                (出典:職場の教養 2023年5月号)

■経営者からの感想
新たな挑戦は、個々の成長と組織全体の進歩を促進する大きな要因であるという点を、再認識するべきです。Sさんの体験談はその具体的な証明となっています。

この事象の背後には、人間の学習と成長のメカニズムが存在します。

心理学者、M.チクセントミハイによる「フロー理論」は、適度なチャレンジが人間の成長を後押しし、モチベーションを引き出すと述べています(”Flow: The Psychology of Optimal Experience”、Csikszentmihalyi, 1990)。

この要素が活性化することで、Sさんは新たなプロジェクトにおいて自己成長を遂げ、その結果仕事の成果も向上し、好循環が生まれました。

具体的な事例として、日本の大手企業、トヨタの「改善・挑戦の精神」を挙げることができます。トヨタでは従業員一人ひとりが日々改善と新たな挑戦を行うことを奨励しています。

その結果、企業全体としての革新的な成長と高いパフォーマンスを維持することができています。

新たな挑戦から避けて安全圏に留まることは、短期的には安心感をもたらすかもしれませんが、長期的な視点では自己成長の機会を逃してしまうことになります。

そして、組織の一人一人が自分自身の新たな挑戦に前向きに取り組むことで、個々が成長するだけでなく、組織全体の成長にもつながります。

私たちはこれからも、自信の成長と組織の成長のために、新たな挑戦を恐れず、自分自身を信じて前進していきましょう。

それが、上記エピソードから学ぶべき重要な教訓です。今日からその一歩を踏み出しましょう!

本日のエピソードを踏まえて、以下の2つの書籍をお勧めします。

『フロー体験入門 楽しみと創造の心理学』

ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)による一連のフロー理論を紹介する著書の一つです。

本書は、人間が最高のパフォーマンスを達成し、最大の幸福を感じる「フロー状態」について詳しく解説しています。

フロー状態とは、自己が課題に完全に吸収され、時間の経過を忘れてしまうような状態のことを指します。

チクセントミハイの理論では、このフロー状態は人間の幸福感や創造性を最大限に引き出す状態とされています。つまり、フロー状態を経験することで、人間は最大限の成果を生み出し、同時に充実感や達成感を感じるとされています。

この本は、フロー体験を理解し、それを日常生活や仕事にどのように活用するかについての実践的なガイドでもあります。上記エピソードのSさんの経験とも関連が深く、自己成長と新たな挑戦の重要性について理解を深めるのに役立ちます。

『ザ・トヨタウェイ サービス業のリーン改革 上・下』

ジェフリー・K・ライカーらによる一連のトヨタの経営哲学の研究の一部で、サービス業におけるリーン思考の具体的な適用方法に焦点を当てています。

上巻では、リーン思考の概念と原則が導入され、その背後にある理論が解説されています。また下巻では、これらの原則を具体的なビジネス環境、特にサービス業にどのように適用するかについて深く掘り下げています。

ライカーは、トヨタのリーン経営が顧客サービス、ヘルスケア、ソフトウェア開発、製品開発など、様々なサービス業にどのように適用できるかを具体的な事例を通じて示しています。彼は、これらの異なる業種での成功事例を通じて、リーン経営の原則がどのように普遍的に適用可能であるかを明らかにしています。

この本は、組織全体の効率性と顧客満足度の向上に向けて、絶えず改善と挑戦を追求するトヨタの哲学を理解する上で非常に有用です。上記Sさんの経験も踏まえ、個々の役割に対してプロフェッショナルに全力を尽くし、新たな挑戦を通じて成長する重要性をより理解することができます。